養育費不払い

そもそも子どもの養育は両親の義務であり、両親が離婚しても養育の義務はなくなりません。

つまりどちらか一方の親が親権・監護権を持つことになったとしても、

非監護者である他方の親の「子どもの養育に対する義務」が消えるわけではないのです。

しかし現実的には、養育費が払われないケースは非常に多いのです。

では相手が養育費を払ってくれない場合はどう対応すればよいでしょうか?

養育費未払いが深刻化

親権に関わらず、親は子どもが自立するまで、子どもに対し「生活保持義務」があります。

生活保持義務」とは「自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者にも保持させる義務」です。

よって子どもを引きとり育てる親は、他方の親に対し子どもが相手の生活と同程度の生活を送ることができるよう養育費を請求することができます。

しかし実際には、多くのひとり親家庭の養育者が、養育費を支払ってもらえていない状況なのが明るみに出ました。

2011年の厚生労働省による「全国母子家庭等調査結果報告」では、8割のひとり親家庭が、他方の親から養育費を受け取っていないことが明らかになったのです。

養育費が支払われなった場合の対処

まずは過去に交わした取り決めについて確認をしましょう。

離婚したときに交わした調停調書判決書がある場合は、離婚時にどのような取り決めを行ったかその内容を今一度確認しましょう。

取り決め内容を確認したら、次は相手に連絡をしましょう。

まずは電話や手紙、メールなどの一般的な連絡方法で、養育費の支払いを催促します。

このときに「いつまでに支払って欲しいか、希望する明確な期日」を伝えることが重要です。

そして、支払期日までに支払いがなければ、内容証明郵便を送ります。

内容証明郵便を出しましょう

内容証明郵便は「いつ、誰が誰に対し、どのような内容の手紙を送ったか」を郵便局が証明していれる手紙です。

用紙1枚につき520字以内の文章(2枚以上の場合はホッチキス等でとめ、割り印を押します)を書いた用紙を3枚用意します。

手書きでもタイピングしたものでも良く、コピーしたものでかまいません。

かかる費用は、郵便料金80円に内容証明料金一枚につき420円、1枚追加ごとに250円、書留料金420円、配達証明料金300円です。

内容証明郵便を出しても支払いがない場合、調停や判決などで決められた養育費の支払いであれば、次の制度を利用することができます。

履行勧告

家庭裁判所に申し立てると、家庭裁判所が状況を調査した上で、正当な理由がないのに調停や審判で決まった義務が果たされていない場合、その義務を自発的に履行するよう相手側に、電話や郵便等で助言、指導、催促してくれる制度です。

法的な拘束力はありませんが、相手に心理的なプレッシャーを与えることで支払ってもらえる可能性が高くなります。

しかしこの申し立てができるのは、調停調書や勝訴判決がある場合に限り、口約束や公正証書だけでは、この制度を利用することはできません。

履行勧告には費用はかからず、電話で依頼することも可能です。

履行命令

履行勧告でも支払われなかった場合、履行命令を出す方法があります。

履行勧告と同様、養育費の支払いを受ける側が、家庭裁判所へ申し立てを行い、家庭裁判所が一定の期間を定め、相手に対し義務の実行を命じてくれる制度です。

正当な理由がなく履行命令に従わない場合は10万円以下の過料を課せられますが、法的強制力はなく、養育費の支払いを強制することはできません。

しかし裁判所からの通知ということで、支払者に対し一定の効果があるようです。

家庭裁判所への寄託

家庭裁判所が支払義務者から養育費を預かり、支払義務者に代わり支払いを行う制度で、当事者同士の接触を避けることができます。

しかしそれ以外の特別な利点があるわけではなく、あまり利用されていません。

強制執行

履行勧告や履行命令でも養育費が支払われない場合、地方裁判所に申し立てを行い、強制執行で養育費を回収する方法があります。

強制執行では、相手の不動産などの財産を差し押さえたり、給料から養育費を天引きしたりすることができます。

非常に強力な制度であり、相手の生活に多大な影響を及ぼす為、申し立てをする際には慎重に検討する必要があります。

公正証書を作成していたら

このように不払いを行う相手から、養育費を回収するのは非常に手間がかかるのです。

もっとも有効な防衛手段として、離婚時にしっかりと離婚協議書を作成して、「強制執行の要件」を記載した公正証書にしておくことがあげられます。

公正証書を作成しておくことで、内容証明の作成・送付、履行勧告から強制執行といった時間や手間を省くことが可能になります。

8割のシングルマザーが養育費を受け取っていない背景に、離婚時にしっかりと公正証書を作成していない事実もあるのです。

何はともあれ、子どもを自立するまでしっかりと育てることは第一優先事項と言えますので、養育費を確保するための行動はしっかり行っておくことが重要です。