養育費と扶養控除

養育費を怠ることなく支払い続けている方の立場からすれば、何かしらの税金控除はないかと疑問に思う方も少なくはないでしょう。

では養育費を支払っている場合、扶養控除を受けることができのでしょうか?

結論から行けば、扶養控除を受けることはできます。

下記で詳しく説明していますが、条件さえクリアしていれば問題なく扶養控除を申請することができます。

状況によってはトラブルも

しかしトラブルに発展するケースも少なくはないのです。

相手側が給与所得を得ていない場合は、特に控除を申請する必要がないため問題になることは考えにくいです。

しかし離婚後、何の職にも就かずに子どもを育てることができる環境は稀だと思います。そのため相手方が働き出した場合、当然扶養控除の申請を行うと考えるの普通です。

この場合、しっかりと話し合いを行える関係性があればトラブルになることも少ないでしょうが、連絡をほとんど取り合っていないような関係の場合は注意が必要になります。ト

トラブルについては下記で説明しますが、事前にケースごとを想定した話し合いを行っておけば回避できることも多いため、離婚時に必ず話し合っておくべき事項になのです。

想定できるケース

まずは離婚時に共働きのケースを見てましょう。

養育費を払う側が所得が多い場合、支払側が扶養控除を申請して、控除を受けた分を加味して受取側により多くの養育費を支払う。これは節税にもなり、養育費も増えるため、両者にメリットがあります。

ただし支払者側が何らかの理由で所得が減少してしまい、受取側とりも所得が少なくなった場合は、受取人が扶養控除を申請する約束をしておく必要があります。

次に養育費を払う側が所得が少ない場合は、受取側が扶養控除を申請する取り決めを行っておくと良いでしょう。

また受取側が働いていない場合は問題ありませんが、働き出した時を想定する必要もあります。

この場合は、上記のケースに照らしあわせて、話し合いを行っておけばよいでしょう。

まずは扶養控除を知ろう

そもそも扶養控除とはなんのことでしょうか?

簡単に説明すると「扶養する親族(下記参照)がいる場合に、納税者の税負担を軽くする仕組み」のことです。

納税額が有利になりますので、必ず確定申告または年末調整の際には、扶養控除に該当する条件を確認しましょう。

扶養控除に該当する親族と認められるのは、次の要件をすべて満たしている必要があります。

  1. その年の12/31の時点で、16歳以上である
  2. 6親等以内の血族および3親等内の婚族である(※配偶者は除く
  3. 納税者と生計を一にしていること
  4. 年間合計所得金額が38万円以下であること
  5. 青色申告事業専従者として給与をもらっていないこと
  6. 白色申告事業専従者でないこと

養育費で扶養控除を受けるには?

法律としては、養育費支払義務者も、扶養控除を受けれるケースがあります。

それは扶養義務の履行として養育費を払う場合は「生計を一にする」となり、扶養控除を受けることが認められるのです。

ただしこれには条件があり慰謝料・財産分与と明確に分けて、「養育費」単独として支払わなくてはなりません。

しかしこれはあくまで法律上可能とされているだけであり、子どもを引き取り育てている側の親が、子どもを扶養家族に入れていれば、養育費支払義務者は扶養控除を受けることはできません。

また基本的には、子どもと納税者が「生計を一にする」にしていることが条件となります。

よって生計を別にしている場合には、扶養家族としてみなされませんので注意が必要です。

別居している場合でも、国税庁の「生計を一にする」の意義によれば、「生計を一にする」とは必ずしも同居を要件とするものではありません。

例えば、勤務、修学、療養費等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

参照:平成27年4月1日現在法令等:所基通2-47

つまり子どもが同居していない場合でも次のケースの時は扶養控除の対象になりのです。学校・病気などで便宜上別居しているが、生活費・学費・療養費などを送金している場合です。

扶養控除の申告が重複した場合

扶養控除の際、注意点しなければならないことは、扶養控除の申告が重複した場合です。

これは両者が扶養控除の申告をしてしまうことなのですが、扶養控除はどちらか一方にしか認められないのです。

もしお互いが扶養控除の申告をした場合、後々この事実は発覚します。そしてどちらかが追徴税を支払うことになるのです。

事前に取り決めをしていないケースで、お互いに連絡を取り合っていない関係であれば、このようなことは十分起こりうるのです。

こうなった場合、当然揉めることは容易に想像できます。どちらも譲らず、どちらが扶養控除を受けるか決まらないケースがほとんどかもしれません。

そういった場合のひとつの判断基準となるのが「所得税法施行令219条」定められています。要約すると、先に申告を行った方を優先。申告が同時期の場合は、所得が多い方となっています。

ただし、これについては色々な見解があるため、まずはこのような状況にならない取り決めを行っておくことが重要なのです。